数年前までは、「マルチタスク最強」伝説がありましたよね。
複数の作業を同時に進められるってのが魅力的だったのか、関連本やセミナーも多かったと聞きます。
しかし、最新科学では「マルチタスクはヤバイ」という結論がでていますんで、今回はシングルタスクで仕事をしようという話です。
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マルチタスクはヤバイ
マルチタスクで作業している人間は、シングルタスクで作業する人間よりもずっと生産性が低いです。
なぜなら、人はタスクを切り替える際に一番集中力を消費するから。
たとえば、メールの返信をしているときに電話がかかってきたシーンを想像してみてください。
脳をメールモードから電話モードに切り替えるときに一番エネルギーを使い、電話モードからメールモードに戻るときにもさらなるエネルギーを使う。
その結果、電話を取らずメールだけに専念していた人と比べ、生産性に大きな差がついてしまうというわけです。
単なるタスクスイッチングに過ぎない
いわゆるマルチタスクと呼ばれるやり方は、『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』でいうところの「タスクスイッチング」にあたります。
手みじかにいえば、マルチタスクは不可能であり、一般に「マルチタスク」と考えられている行為は「タスク・スイッチング」にすぎない。タスクからタスクへとせわしなく、注意を向ける先を無益に変えているだけだ。タスクの切り替えには0・1秒もかからないため、当人はその遅れに気づかない。
(『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』より)
マルチタスクをしているつもりの多くの人がやっているのは、実際のところ「タスクの切り替え」だったんですね。
このタスクスイッチングをおこなうことでどんなデメリットが起こるかというと、「決定疲れ」という現象を引き起こしやすくなってしまうのです。
「決定疲れ」とは心理学用語のひとつですが、字面からイメージできる通り、決定するまでのステップで脳が疲れてしまう現象であります。
ジャムの実験
たとえば、マーケティングの世界でよく引き合いに出されるジャムの実験(『選択の科学』より)があります。
これは、あるお店のジャムの試食コーナーに、(1)24種類のジャムを置いた場合と、(2)6種類のジャムを置いた場合とで、試食した人数・実際に買った人数を調べたコロンビア大学の実験です。
この実験の結果、(1)の方が試食をした人数は多かったが、実際にジャムを買った人数は(2)の方が多くなるということがわかりました。
(1)で24種類のジャムを並べられたときには、「どれにしようかな」という迷いが生じ、ジャムを買うという意思決定に疲れてしまう。
それが決定疲れなんですな。
んで、タスクスイッチングの話に戻りますと、タスクの切り替えを頻繁におこなっている人は、
「次にどっちをやろうかな」「これとこれ、どっちを先にやろうかな」という意思決定の回数が必然的に多くなります。
その結果、ジャムの実験と同じように決定疲れをおこしてしまい、重要な決断(前の例では「ジャムを買う」)ができなくなってしまう。
すると、自分の仕事において一番重要なタスクに取り組む決断ができないため、いつまでも最重要課題が終わらなくなってしまうわけです。
マルチタスクの良い例と悪い例
しかしこのマルチタスク、実は良い例と悪い例があります。
意識的な努力を必要としない活動は、メインの作業と同時におこなうことができる。よって、これはマルチタスクにはあたらない。
こうしたシンプルな作業には「簡単で機械的におこなえるもの」「集中力を要さないもの」が含まれる。
(『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』より)
すなわち、「息を吸いながら仕事をする」「まばたきしながら資料を読む」なんてことは当然、悪いマルチタスクにはあたらないわけです。
ほかにもウォーキングしながらオーディオブックを聴くというのも良いマルチタスクの例です。
歩き慣れている道を散歩しながら、耳から流れてくる英語のCDで勉強する…みたいな行動は、一見マルチタスクのように見えはするものの、実際にはシングルタスクです。
逆に、作業をしながらアニメを見てしまったり、放置ゲー・周回ゲーのゲームをやってしまうというのは、完全にNGな例。
私も昔はよくやっていたんですが、パソコンの脇に置いたiPadで放置ゲーをやりつつ、学校の課題を終わらせる…みたいなこともやっている人が多いはず。
課題をやりながら数分ごとにゲームを操作して、区切りがついたらまた課題に戻る…を繰り返すヤツです。
これはゲームを操作するたびに100%集中力がそっちに向いてしまっているんで、典型的な悪い例です。
アニメや邦楽を聞きながら作業をやるのも同様。
アニメのセリフや歌の歌詞に注意が向いてしまうようなら、それはマルチタスクに陥っている可能性が高いです。
マルチタスクではなく、シングルタスクに切り替える3つのポイント
次からは、マルチタスクを防止し、シングルタスクをおこなうためのコツを3つ紹介していきます。
1.やることリストに優先順位をつける
まずは、やることリストに優先順位をつけることが最初のステップ。
これを読んでいる人の中には、毎日のやることリストはつくっているものの、気が向いたときにそれぞれのタスクを終わらせていく…みたいな方も多いはず。
しかしそれでは、一番めんどうくさくて一番重要なタスクが後回しにされがちです。
そうではなく、あらかじめやることリストに優先順位をつけておいて、最優先のタスクから順番に終わらせていくようにしましょう。
優先順位をつけるのが難しければ、タスクの重要度を100点満点で点数をつけてあげるのもおすすめ。
- メールチェック:30点
- クライアントへ電話:50点
- 明日の会議資料作成:80点
みたいな。
もしこれが点数をつけておらず、優先順位をつけていなかったとしたら、一番どうでもいいメールチェックを出社後第一に取り組んでしまうことになります。
そうではなく、80点の最重要課題「明日の会議資料作成」をまず終わらせようってことですね。
2.今に集中する
私たちには過去を変えることも、未来を予言することも、他人を意のままに動かすこともできない。ただ、いまという瞬間、シングルタスクに集中し、自分の人生、仕事、周囲で渦巻いている世界を、よりよい方向に向けることだけが可能なのだ。
(『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』より)
ついマルチタスクをやってしまう人というのは、「今」を真剣に生きていない傾向があります。
過去の出来事について悔やんだり悩んだりして貴重な時間を浪費したり、起こりもしない未来を妄想して不安に駆られてしまったり。
でも、私たちが生きているのは今であり、私たちが自分でどうにかできるのは今だけということに気づかないといけません。
今を真剣に生きることができれば、自然と「今一番大事なことは何か」という思考につながり、マルチタスクを防げるようになります。
3.あとでやることリストをつくる
日常のテクニックとして一番おすすめなのは、「あとでやることリスト」をつくることです。
これは、メンタリストDaiGoさんがやっている「バッチ処理」という考え方に近いもの。
仕事や勉強中に、やらなくてはいけない雑事を思いついたら、いったんメモして、すぐに頭の外に出しておくのです。それで最後に残さずまとめて一気に片づけます。
(自分を操る超集中力より)
つまり、作業中に「あれもやらなきゃ」という物事が見つかったら、とりあえず付箋やメモに書いておくということですな。
とにかく頭の中から出してしまえば、脳のリソースを食い続けることを防ぐことが可能。
考え方としては、ネガティブ思考から脱し、気持ちを前向きにする4つの行動とはでも紹介した、不安でどうしようもないときに、自分の気持ちを紙に書き出すと気持ちが楽になる「筆記開示(筆記療法)」と同じ原理です。
ちなみに私の場合、パソコンのメモ帳を1つ「あとでやることリスト」専用にウィンドウを立ち上げています。
今リストにあるのは、「Checkme Pro」というメモ。
心拍数などいろいろ計測してくれるコンパクトなデバイスらしいので、ブログを書き終わったらAmazonで調べてみようと思っていたメモでした。
(編集後記:ということでブログを書き上げたあとにAmazonで調べてみたんですが、本体が10万近くする超高級デバイスだったようでガックリしました。笑)
外部の刺激にどう対応するか
自分ではシングルタスクに集中したいと思っていても、周りの環境によっては自然とマルチタスクになってしまう場合があります。
そんなときには、以下に紹介するような3つの対処法を試してみましょう。
1.目に入るモノを減らす
まずは、目に入ってくるモノを減らすこと。
そもそもマルチタスクをしてしまうのは、今やっているタスク以外のタスクが目に入ってきてしまうのが大きな原因です。
たとえば、作業をしている途中で机の上の散らかりようが気になって掃除を始めちゃったりとか、ハガキを出さなきゃいけないことを思い出しちゃったりとか。
そもそも視界に入るモノを減らしてしまえば、「そういえばあれもやらなきゃ」という罠に陥ることなく集中できるというわけです。
もちろん実体のあるモノだけじゃなくて、たとえばパソコンのデスクトップや、スマホのホーム画面も同様です。
デスクトップにはできるだけファイルを置かずゼロの状態をキープし、スマホのホーム画面もゼロに近づけるのが理想です。
集中力アップのためにマルチモニターをやめてみようでも書きましたが、もし3つ4つとたくさんのモニターを設置してパソコン作業をしているようなら、思い切って1画面に減らしてしまうのもおすすめです。
2.通知をオフにする
パソコンはもちろん、スマホの通知はオフを基本としましょう。
ゲームアプリやニュースアプリ、メールや電話の通知も全部オフ。
せっかく集中していたときにジャマなLINEが来て「ピコーン」と耳障りな音を発しないよう、スマホの設定をしてしまいましょう。
【時間泥棒】LINEの「ニュース」タブを非表示にして時間浪費とストレス防止の記事では、LINEの「ニュース」タブの消し方とともに、iPhoneの「おやすみモード」の設定方法を紹介しています。
iPhoneの方であれば、おやすみモードを24時間オンにしておくことで、通知が鳴らないように設定できます。
まとめ
- マルチタスク(タスクスイッチング)は生産性を下げてしまう
- 決定疲れにより、重要なタスクに取り組む決断ができなくなってしまう可能性も
- シングルタスクのためには「あとでやることリスト」がおすすめ
以上、「【シングルタスク入門】マルチタスク(タスクスイッチング)をやめて集中力を最大化する方法」という記事でした。
正直にいうと、私自身今でも知らないうちにマルチタスク状態になってしまうことがあったりします。
たとえば、ごはんを食べながらアニメを流してしまったりとか。
そうすると、せっかくつくった料理の味がわからなくなってしまうし、早食いしたり噛む回数が不足したりする不健康な習慣にも結びつきがちになってしまいます。
このようにマルチタスクは、生産性の低下や意思決定の先延ばしといった目に見えないデメリットだけでなく、健康上のリスクにもつながる可能性のあるワルモノ。
ここで紹介したシングルタスクのコツを実践しながら、日々の生活の中からマルチタスクを排除していきましょう。