『「幸せをお金で買う」5つの授業』という本では、幸福になるお金の使い方をレクチャーしています。
今回は、本書のなかでもモノよりも経験を買うべし!とされる理由をまとめていきます。
「本を買うのは経験?それともモノ?」という疑問にも答える、経験の選び方もご紹介します。
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1.経験を買うと幸福になれる理由
サンフランシスコ州立大学の心理学者ライアン・T・ハウエルらによると、経験にお金を使った方が、物質的なモノにお金を使うよりも私たちに幸福をもたらしてくれるそうな。
同じ1万円というお金でも、ただ服を買うよりも日帰り旅行に使った方が幸せになれるってことですね。
これは経験的にも納得できる話ではないでしょうか。
だれかと旅行に行った思い出は強く印象に残りますが、ひとりでおいしい食事を楽しんだ思い出ってなかなか記憶に残らないものです。
また、ウィンスコンシン大学マディソン校のトーマス・デレイア教授らによる研究でもおもしろいことがわかっています。
この実験は、50歳以上のシニア世代を対象に、どんな買い物をすると人生の満足度が上がるのかを調べているものです。
研究者たちが支出項目と幸福度のつながり調べた結果、「レジャーにお金を使っている人は幸福である!」という関連性がみつかったそうな。
当然ながら、こうした年配者たちがレジャーに使うと報告した金額は、住宅費に比べればずいぶん少なかったのですが、やはりこの場合も、住宅費は生活に対する満足度にはなんの影響も与えていないことがわかりました。
家賃が安かろうと高かろうと、人生の満足度は変化なしってのもおもしろい傾向です。
2.経験を買うと魅力的になる
なぜ経験を買うと幸せになれるのかって理由については、次の話が参考になるかもしれません。
コーネル大学でおこなわれた実験では、面識のない人同士に会話をしてもらい、どのくらい会話が弾んだか、相手がどんな人だと思ったかを調べたそうです。
その結果、物質的な買い物をした人と話すよりも、経験的な買い物をした人と話す方が会話は弾んだうえ、さらに経験的な買い物をした人のことを好意的に評価したのです。
つまり、経験的な買い物をする人は、他人の目に魅力的にうつるってことですね。
私がこの話を聞いて思い出したのは、「人間は社会的動物である」っていうアリストテレスの言葉。
他人と交流し、仲間と協力しようとする本能を持つ私たちは、積極的に他者と関わり、思い出を共有する行動をする人を遺伝子レベルで好むようにできているのかもしれません。
ひとりで楽しむモノを買ってもだれかと楽しい気分を共有することはできませんが、いっしょに旅行へ行けば非日常的な経験を共有することができますからね。
経験を買って他者と交流することは、社会的な動物である私たちにとってなによりの幸福に結びつくのでしょう。
3.モノを買うと後悔しやすい
さらに本書では、モノを買うと「安い方にすればよかったかも」「白じゃなくて赤を選べばよかったなあ」なんて、後悔する可能性が高くなるとも指摘しています。
というのも、モノは簡単に比較することが可能だから。
たとえば、ボーナスが入ったので新しいテレビを買ったとします。
価格.comで似たモデルを比較し、Amazonのレビューで評価を調べ、量販店の店頭でも品定めして購入したとしましょう。
おそらく、買った直後の満足度は非常に高いはず。
「安くいいものを買えた!」とか、「同じ価格帯で一番高性能なテレビを買えた!」みたいなよろこびを感じるでしょう。
ところが、時間が経つにつれて買い物への満足度は低下するうえ、よその家にあるテレビがうらやましいと思ったり、新発売のテレビがほしいと思ったりしてしまいます。
要するに、「もっとお金をためて大型テレビを買えばよかった」「1年待ってこっちのモデルを選ぶのが正解だった」と、後悔の気持ちが湧いてきてしまうのであります。
モノの場合は、比較対象がたくさんありすぎるために過去の買い物の満足度を低下させてしまうんですね。
しかし、経験の場合は比較対象となるものがありません。
たとえば友人と沖縄旅行へ行ったとして、それを「個人で行った函館旅行」とか、「友人と参加した飲み会」の経験と比較することってまずないじゃないですか。
つまり後悔の気持ちが生まれにくい。
有害な否定的感情を抱かずにすむのであります。
4.経験を買った思い出が自信につながる
モノよりも経験を買った方がいいっていうちょっと変わった理由もありまして、「経験を買った思い出は、メンタルに効く薬にもなる」というものがあります。
これは社会学者フレッド・デイヴィスという人が述べた話で、
郷愁は「過去の幸福と達成を思い出させて私たちを安心させてくれるのです。同時に、そうした記憶の銀行の中にある思い出は、自分が価値のある人間だという自信を与えてくれる」
つまり、経験によってもたらされた過去の思い出は、前向きになるサポートをしてくれるってことです。
仕事がどうしてもうまくいかず、職場の人間関係も失敗続きなとき、私たちはついネガティブな思考にハマってしまいます。
でも、大学時代に友人とどんちゃん騒ぎした体験は、「こんな自分でもいっしょに遊び、支えてくれる仲間がいる」ということに気づかされてくれます。
こうした勇気付けられる思い出も、モノを買ったことを想起しても得られません。
経験を買い、だれかと同じ時間を共有した思い出を持っていると、メンタルヘルスにも効くってことになりましょう。
5.どんな経験を買えばいいの?
じゃあこれから経験を買うようにしよう!って決心してぶつかる壁として「このパソコンはモノなの?経験なの?」って悩みがあると思います。
パリ旅行は明らかに経験で、パリの絵画は明らかに品物ですが、買い物の多くは、どちらともつかないグレーゾーンに入ります。
と、本書の中でも述べられています。
パソコンでSNSをするから経験を買ったとも考えられるけど、旅行と比べると絶対パソコンはモノだよね、って話です。
そのような葛藤から離れ、「こういう買い物をすべし!」という基準として、
- そのモノ(経験)を、ひとりで楽しむものかどうか
を考えるといいと思います。
パソコンやスマホをひとりで使い、ひたすら音楽を聞いたりゲームをしたりするだけなら、それはあまり幸福をもたらさない「モノ」に分類されるでしょう。
しかし、パソコンやスマホを使ってLINEで友人とコミュニケーションを取り、SNSで思い出を共有し、同じゲームをいっしょにプレイして楽しむのであれば、それは「経験」を買ったことになります。
同じように、ひとりで飲むためにビールを買うなら「モノ」だし、みんなで宅飲みするために買ったお酒は「経験」です。
これから買おうとしているのは、ひとりで使うものか、みんなで使うものか。
これを基準にして「みんなで使うもの」を増やしていけば、少ないお金でたくさんの幸福を得られるはずですよ。
まとめ
- モノを買うよりも、経験を買おう
- 他者と交わり、思い出を共有する「経験」にお金を使うことが、幸福になる道しるべ
- 「モノか経験か」を判断するときは、「これはひとりで楽しむのかみんなで楽しむのか」を考えるといいぞ
モノよりも経験を買う方がいいってことは頭ではわかっている。
でも、ついつい新しい服や本を買ってしまう…という方は多いはず。
でもご安心を。
コーネル大学のギロヴィッチらによる研究では、「本は経験的な買い物だ」と考えるだけでも本を買ったことに後悔しにくくなると示されています。
要するに、服や本など一見ひとりで楽しむようなモノを買ったとしても、「この服で友人と遊びに行く」とか「この本を読んであの人におすすめしてあげる」など、これは経験的な買い物だ!って考えるだけでも幸福になれるチャンスがあるってことです。
幸せな人生を送りたいと願うのであれば、ひとりで楽しみを独占するのではなく、だれかと思い出を共有できるよう心がけてみましょう。
以上、『幸せになりたいなら、モノより経験にお金を使うべし!その理由と経験の選び方まとめ』という記事でした。