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「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」の心理学

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「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」とは、19〜20世紀に活躍した心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉です。

この名言には心理学的な裏付けがあり、「アズイフの法則」とも呼ばれます。今回はこの法則をもとに幸福になる方法、怒りを鎮める方法、意志力を高める方法を紹介していきます。

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1.望み通りの感情をつくりだす「アズイフの法則」

その科学があなたを変える』という本では、私たち人間は幸福だから笑顔になるのではなく、笑顔をつくるから幸福になるのだ、といった話が取り上げられています。「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」という名言は、誰しも1度は聞いたことがあるでしょう。

行動が感情を生み出すという説をとるなら、人はあたかもそれを体験したかのように行動しさえすれば、いかなる感情でも望み通りに作りだせるはずである。

これを著者のリチャード・ワイズマン博士は、「アズイフの法則」と読んでいます。"as if"とは「〜のように」という意味の熟語。つまり「〇〇なように振る舞えば、〇〇になれる」という話です。

〇〇の部分には、幸福・ポジティブ・元気・精力的などの単語を当てはめることができます。「幸せになりたい」という心理状態をイメージして、まるで幸せで満たされた人のように振る舞ってみる。すると自然と幸せな気分になれるというわけです。

2.足どりにも現れる心と行動のつながり

なんだか怪しげな自己啓発セミナーで紹介されるような手法ですが、これにはしっかりとした心理学的裏付けがあります。

たとえば、アトランティック大学の心理学者サラ・スノドグラスによる実験では、集まった被験者はそれぞれ違った歩き方をするよう指示されました。

参加者の半数は大股で、腕を振り、背筋をのばして歩くように指示された。もう半数は小股で、のろのろと、うなだれて歩くように指示された。

そしてその全員にアンケートを取り、「歩いたあと、どのくらい幸福を感じたか」を回答してもらいました。すると、

大股で歩いた人たちのほうが、のろのろ歩いた参加者より幸福感を感じる度合いがはるかに高かったのだ。

という結果が得られたそうな。私たちが「小股で、のろのろと、うなだれて歩く」のは、主に気分が落ち込んでいるときです。対して「大股で、腕を振り、背筋をのばして歩く」のは、元気がみなぎっていて幸福で、気分が上向いているときの行動といえるでしょう。

足どりを少し変化させるだけでも、心理状態に大きな影響を及ぼすのであります。

3.怒っているときに暴力を振るうのは逆効果

怒りという感情を支配しようとすることを「アンガーマネジメント」といいます。最近では怒りを鎮めるためのセミナーとして、思いっきり攻撃的な行動を取ってストレスを発散させようとするものもあるみたい。

怒りの感情を抑えるのではなく発散させることで、怒りエネルギーをうまく流してあげよう、という考え方でしょうか。しかしこうした怒りへの対処法は、「アズイフの法則」からすると大間違いなことがわかります。

なぜなら、大声をあげて物に当たり、大きく舌打ちするような行動は、まさに「怒っている人」の行動だからです。怒っているように振る舞えば、自然と心理状態もどんどんヒートアップしていきます。

なので、怒りを鎮める方法として正しいのは「穏やかな人」のように振る舞うこと。

笑えば幸せな気持ちが生まれ、べつの人の目をじっと見つめれば恋の気分が生まれる。それと同じように、穏やかであるかのように振る舞えば、あなたはたちまち穏やかな気分になれるのだ。

今後怒りの感情を湧いたときには、まず第一に笑顔をつくってみるといいかもしれません。笑顔のまま怒鳴って怒れる人はいないでしょうから。

4.「幸せになろう」と考えてはいけない

先に紹介したセミナーの話と同様に、「幸せになるぞー!」なんて声に出して自分を奮起させるようなやり方も、幸福になるための得策とはいえません。なぜなら、幸せな人は「幸せになるぞー!」なんてこぶしを掲げて宣言したりしないからです。

元気になりたければ、努力して幸せなことを考えるより、いま幸せであるかのように行動すればいい。そのほうがはるかに効果的で手っとり早い。

幸せになるにはどうしたらいいかな?なんて考えるヒマがあるのなら、まるで世界一幸せな人になったかのように振る舞った方が生産的です。

笑顔を作り、足どりを軽くし、幸せな気分になれる言葉を口にし、踊り、笑い、歌う。そのほかなんでも楽しいことをすればいいのだ。

「今日も1日楽しかった。幸せだった。」などと口に出して言葉にしたり、ヘンテコな幸せの舞を踊ってみたり、笑顔で明るい歌を歌ってみたり。いかにも幸福でいっぱいな人がやりそうな行動を取ってみればいいわけですね。

5.こぶしを握れば、意志の力が回復する

この「アズイフの法則」は、意志の力を回復させるためにも使うことができます。具体的には、体の筋肉を緊張させ、まるで意志の力がみなぎっている人のように振る舞えばOK

シンガポール国立大学のアイリス・フンらは、次のような研究をおこないました。

参加者をいくつかのグループに分け、氷の入ったバケツにできるだけ長いあいだ両手を浸けたり、近くのカフェテリアで甘いスナック菓子のかわりに健康的な食品を注文したりしてもらった。

つまり、意志の力を試されるような日常的な行動を取ってもらったということですね。そして被験者の半分には、次ような指示を出しました。

毎回、参加者の半数には行動をとる前にこぶしを握る、椅子に腰かけて両足のかかとを床から離す、ボールペンをきつく握る、などで各部の筋肉を緊張させるように頼んだ。

やる気がみなぎっている人をイメージすると、ダラーンと全身の筋肉を弛緩させている人っていうよりかは、こぶしを握ってガッツポーズをつくっているような人の人物像が思い浮かびます。そんな人物のように、一部の筋肉を緊張させてみたというわけです。

結果を見ると、エクササイズをした参加者は、しなかった者よりも氷のバケツに長時間手を浸けることができ、果実酢を飲んだり健康的な食品を買ったりする割合も高かった。

一部の筋肉を緊張させる「エクササイズ」をしたグループの人たちは、そうでない人よりも意志の力が高まったということですね。こぶしを握る、みたいな手軽で簡単な方法でも意志力があがるってのは、なかなか便利なテクニックです。

やる気やモチベーションを高め、ここぞという場面でがんばりたいときには、こぶしを握るなどして筋肉の一部を緊張させると、意志の力がアップして良い成績を残せるかもしれません。

まとめ

というわけで、「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」の心理学、すなわち私たちの行動が感情をつくるのだ、という話を解説してきました。

「穏やかな人」のフリをして怒りを鎮める方法や、「幸せな人」のフリをして幸福になる方法、「やる気にあふれた人」のフリをして意志の力を高める方法も紹介しました。どれも明日から使いたくなるようなテクニックばかりです。

リチャード ワイズマン博士の本は、今回のネタ本『その科学があなたを変える』以外にもおもしろい本がたくさん出ているので、こうした科学 + 自己啓発系の話が好きな方は、ぜひほかの本も手に取ってみてください。