『アイデアのちから』って本で紹介されている興味深い現象の1つに「隙間理論」ってのがあります。広告やマーケティングでよく使われる手法で、知っていると企業の広告戦略に惑わされずにすむようになるでしょう。
そういう意味で役に立つ知識なだけでなく、知っているとおもしろい知識でもあるので、同書から引用しながら紹介していきます。
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1.知識の隙間こそ、興味と好奇心を駆り立てる
「隙間理論」ってのは、簡単にいうと知識と知識の間に空白があると、その空白を埋めたいっていう強い欲求が働くってことであります。
一九九四年、カーネギー・メロン大学の行動経済学者ジョージ・ローウェンスタインは、状況的興味をきわめて包括的に説明した。その内容は、驚くほどシンプルだった。好奇心が生じるのは、自分の知識に隙間を感じたときだというのだ。
考えてみると、人間が抱えるすべての好奇心が、この理論で説明できてしまうのかもしれません。
「バンジージャンプに興味がある」みたいなシチュエーションを考えてみても、頭の中のイメージにおけるバンジージャンプの中で「実際に体験したことがない」って空白があるから、やってみたいなって思うのでしょうから。
この現象を「隙間理論」っていうなんともシンプルで的を射た表現で述べた学者さんも、それを翻訳した『アイデアのちから』の著者さんにも敬意を感じずにいられません。
ただしこの隙間理論、広告やらマーケティングやらの分野で濫用されているような気がしないでもないですが。
2.クイズ番組のCMのように、知識の隙間をつくると効果的
たとえばテレビをみているときに、すごくいいところでCMが挟まれる…みたいなことってよくありますよね。これも隙間理論を応用して、「続きが気になるはずだからCMも見てくれるだろう」っていう考えがベースにあります。
実際には視聴者側の貴重な時間を奪っているわけで、それはスマホにおける全画面広告とか、YouTubeにおける動画広告も同じでしょう。
「続きを見たい」「知識の隙間を埋めたい」っていう人の好奇心をうまく操って、なんとか儲けを出そうという広告会社の戦略というわけです。
ローウェンスタインによると、隙間は苦痛を生む。何かを知りたいのに知らないというのは、どこかが痒くて掻きたくなるのと同じだ。その苦痛を取り除くためには、知識の隙間を埋めなければならない。くだらない映画を見るのは苦痛なのに、我慢して最後まで見るのは、結末がわからない苦痛の方がはるかに大きいからだ。
くだらない映画とか、どうでもいいテレビ番組なんかに自分の時間を奪われないためには、あらゆる企業が私たちに対して隙間理論でアプローチをかけてきているってことを知って防備しないといけません。
3.ドラマやゴシップの誘惑も、隙間理論のせいかも?
ちなみに『アイデアのちから』では、私たちがゴシップ記事に強く惹きつけられてしまうのも、この隙間理論のせいだってことが述べられています。
人がゴシップ好きなのは、当の人物のことはよく知っているのに、足りない情報があるからだ。だから、ちょっとした知り合いの噂話はしなくても、有名人のゴシップにはことのほか興味を掻き立てられる。
なるほど確かに、ゴシップが気になるって好奇心も、自分の知識の中に隙間があるせいだって考えると納得できますね。
同じように、「みんなが知っていることを自分だけが知らない」ってシーンで感じる居心地の悪さも、隙間理論によって知識が欠落しているせいで生じるものなのでしょう。
非常に厄介な特性ですが、これはもう人間の本分みたいなもんですので、変えることは難しいでしょう。
しかし、「どんな企業も隙間理論を使って、金と時間を奪おうとしている」ってことをあらかじめ知っておけば、必要のないものを買ったりすることは少なくなるはず。
お金や時間の節約を考えるときは、この隙間理論って考え方をぜひとも念頭に置いておきましょう。
まとめ
以上、自分の意見を印象付けるための「隙間理論」という現象について書いてきました。
なお、今回の参考文献である『アイデアのちから』って本ですが、一見するとブレインストーミングの大切さを説くようなアイデアの生み出し方が書かれている本に思えます。
しかし実際には、「記憶に残るメッセージに共通する6大原則とは?」とでもタイトリングするのが正しい本で、広告やマーケティングの勉強本みたいな面があります。
そういう業界に携わっている人ならもちろん、「もっと誘惑に強くなりたい」って人にとっても一読の価値アリですんで、ぜひ手にとってみてください。