「成功したから幸せになれるのか」、それとも「幸せだから成功するのか」のどちらが正解なのかと問われれば、まず間違いなく前者だと答えると思います。かくいう私もその一人で、成功が幸福をもたらしてくれると信じていた人間でした。
しかし『幸福優位7つの法則』では、幸福こそ成功をもたらす要因であるということが書かれています。中でも「キャンディ1つでパフォーマンスが2倍になった」って研究がおもしろかったので紹介します。
努力→成功→幸福ではない
ポジティブ心理学と脳科学の一〇年以上にわたる画期的な研究によって、成功と幸せの関係は、普通に考えられている矢印とは逆だということが、明解に証明された。
すなわち、幸せは「成功に先行する」のであり、単なる「成功の結果」ではない。
『幸福優位7つの法則』には、このようなことが書かれています。一般的に私たちは、努力を継続して成功に結びつき、そこで初めて幸福になれると考えてしまいがちです。しかし実際にはそうではなく、幸福な状態が成功を導くってことですね。
その根拠として、次のような研究結果も取り上げられています。
ある研究では、二七二人の社員のポジティブ感情のレベルをまず測り、その後一八カ月の仕事の業績を追跡した。他の要素を調整した後でも、最初に幸福度が高かった人たちは一八カ月後に、そうでない人たちよりもよい評価を得ていて給料も高かった。
確かに、明るく前向きで人気のある人であれば仕事でも成功を収めやすそうに思えますよね。それでも、成功よりも幸福が先にあるってのは驚きの考え方でした。
私もそうなんですが、「お金を稼いで幸福になるために、嫌いな仕事でも我慢して努力しよう!」ってタイプはかなり多いはず。ですがこのように考えている人って、今の仕事を天職だと思って幸せを感じながら働く人と比べると、パフォーマンスに大きな違いがあるんでしょうね。
キャンディでパフォーマンスが2倍になった研究
医療の世界では、診断ミスに直結する「アンカリング」って現象があるそうで、これは最初に思いついた診断に固執してしまって、後から別の情報が入ってきても意見を変えられない姿勢のことを指すんだとか。
「この人が犯人だ!」といったん判断を下してしまうと、その人のアリバイとか別の犯人が存在する証拠が発見されても、自分の間違いを認められない…みたいなイメージですね。
このアンカリングをどうやったら避けられるかって実験が『幸福優位7つの法則』で紹介されています。
ベテランの医師たちを3つのグループに分けて、1つ目のグループには幸福度を高める介入をして、2つ目のグループには医療関係の記事を読ませ、3つ目のグループには何もしないというモデルです。
その結果、幸福度を高める1つ目のグループでは、3つ目のグループに比べて2倍の速さで正しい診断を下すことができ、さらにアンカリングも半分以下だったんだとか。
ここでおもしろいのが、「どうやって幸福度を高めたか」という手段です。
なんと、彼らにキャンディを配ったのである! 医師たちを二倍有能にし、二倍以上クリエイティブにするのに、賞金も、昇進の約束も、有給休暇も必要なかった。診断前のたった一個のキャンディで十分だった(血糖値が実験に影響するといけないので、キャンディを食べてもらったわけではない)。
単にアメ玉を配っただけでも医師の幸福度が上がり、パフォーマンスが2倍に高まったとのこと。病院に行く際には、医者にキャンディを渡そう!なんてジョークも紹介されています。(笑)
自分の幸福度にもっと気を配るべし
人はポジティブな感情を抱くことで、視野が広くなってよりクリエイティブになり、脳の処理速度も向上することがわかっています。もちろんネガティブな感情にもメリットはあって、1つのことに集中するのに適していたりもします。
とはいえ、個人でもチームでも、パフォーマンスを向上させたいなら幸福度を高めるのが吉。仕事やタスクに忙しくて、自分の幸福度について考える暇がないって人は多いでしょうが、私たちはもっと自分の幸せに注意を向けるべきなのかもしれませんね。
瞑想・運動・親切など、ポジティブ感情を高める方法も『幸福優位7つの法則』で紹介されているので、このリストを参考にして日々の幸福度向上を図ってみたいと思います。