おむつや生理用品といった分野で海外にも進出し、急成長しているユニ・チャーム。そんな同社の社長、高原豪久さんの著書が『ユニ・チャーム式 自分を成長させる技術』です。
私は、「人がもって生まれた能力に大きな差はない」と考えています。(「はじめに」より)
と述べる著者は、社長就任から売上高を3倍に。海外売上比率を1割から6割に成長させた敏腕経営者としても知られています。
本書ではユニ・チャームで掲げられている「共振人材」と呼ばれる理想の人物像を育むための、行動原則や仕組みが紹介されています。主にチームづくりやコミニュケーションについて書かれていますが、ここでは「個人の成長」のために役立つ言葉を引用してご紹介します。
目次
SPONSER LINK
「速いものが遅いものに勝つ」
今日のビジネス環境では、「大きいものが小さいものに勝つ」のではなく、「速いものが遅いものに勝つ」と、私は考えています。この「速い(スピード)」には、「早い(タイミング)」という意味も含めています。(2ページより)
第1章の1節目、この言葉から始まります。
本来個人や中小企業は、大企業の圧倒的な経済力と支配力には勝てないとされていました。ですが現代では、そうした大きいものが勝つのではなく、「速い(早い)もの」が勝つ環境となってきています。
つまり、資本金が少なく従業員もゼロに近い小さな組織であっても、大企業に勝ちうるということ。それには、市場の流れを掴んでアイデアを企画し、誰よりも早く製品を開発することが大切です。
「先発利益」「先行者優位」という言葉にもあるように、誰よりも先に事業を成し遂げることで、大きな利益を得ることができるのです。会社を大きくしよう大きくしよう、と考えるよりも、速く完成させよう速く完成させよう、と意識することが大切なんですね。
そのためには、ただただ足の速いウサギではなく、慎重でまじめなだけのカメでもなく、「カメの勤勉性をもち合わせた足の速いウサギ」であることが、今日の社会で生き残る術だと述べています。(2ページ)
成功のための2つの要素
ビジネスにおいて成功をもたらしてくれる要素とは、何だと思いますか?著者によればそれは、「素直さ」と「好奇心」なのだそうです。
ここで言う素直さとは、ただ上司の命令に従い、やれと言われた仕事を愚直にこなすことではありません。改善するべきことを素直に認め、天邪鬼にならずに成長しようとすることを指します。
塚本亮さんの著書「努力が勝手に続いてしまう。」でも、素直さの大切さが説かれていました。成功するかどうかの違いは、いつでも素直な態度でいられるか、それとも理屈をこじつけて、「やらない理由」を探してしまうかにあります。
また、まるで子どものような好奇心をもつことも大切です。見ず知らずの土地に行き、初めて体験する物事に出会った時、不安にならずに好奇心をもって行動できるかどうか。「なぜ!?」「おもしろい!!」と思えるかどうかが重要です。
どんなことに対しても、「まずはやってみよう!」というスタンスでいることで、自分の行動範囲が広がり、考え方にも幅が出てきます。失敗してケガを負うこともあるかもしれませんが、その経験は人としての成長に一役買ってくれるでしょう。(146ページ)
SPONSER LINK
自分の心を支える3つの軸をもつ
精神的に安定し、心を強くするための準備として、3つの軸を挙げています。
・「自分だけの世界」の軸
・「親しい人たちとの関係」の軸
・「目標に対する達成意欲」の軸
「『自分だけの世界』の軸」は、没頭できる趣味や自分なりの哲学のこと。他人の助けなしに自己完結する世界を持っていれば、辛いことがあっても嫌な出来事を忘れさせてくれます。
「『親しい人たちとの関係』の軸」は、家族や友人との関係をしっかりもつこと。いざとなったら頼れるような人間関係をたくさん作っておくことは、心の安定に繋がります。
「『目標に対する達成意欲』の軸」というのは、自分の限界を超えた目標を立て、それを達成しようとする意欲のことです。進むべき道が見えていれば、努力を続けることも難しくありません。
これら3つの軸のうち、たとえ1つが揺らいでしまったとしても、残り2つの軸がしっかりしていれば、私たちの心を支える柱となってくれるのです。目標に向けた努力が失敗に終わったとしても、ストレスを発散できる趣味があれば溜め込まずに済みますし、慰めてくれる友人がいれば立ち直りも早くなります。(149ページ)
モチベーションを継続するための最高の教科書
自分のモチベーションを高め続けるためのコツは、「目標とする人物をもつこと」。会社の上司や先輩でもいいですし、歴史上の人物や芸能人を目標としても良いでしょう。
コミニュケーションがうまい人を目標にすれば、自然と声の大きさや会話のネタが充実してくるでしょう。読書家の作家を目標にすれば、毎日1冊読書することも難しくなくなります。
目標とする人物をもつことで、やるべき行動や思考を具体的にイメージすることができるようになるので、モチベーションの向上に繋がるのです。(155ページ)
おわりに
ここで紹介した1章、5章以外では、主にチームづくりやチームの育て方。仕事への向き合い方が解説されています。経営者やチームのリーダーとしての立場にある人にとっては、役立つ情報がたくさん載っているでしょう。
「自分を成長させる」というよりも、「自分を含めたチーム、会社を成長させる」ための技術が満載の本でした。気になった方はぜひ手に取って見てください。