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「昨日の自分に教えたいこと」をテーマに書き散らしてます

手編みのセーターがうれしいのは、相手が『機会費用』を払ってくれたから

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あなたの人生は「選ばなかったこと」で決まる 不選択の経済学』という本を読んでいます。「機会費用」という経済学用語をテーマにした本なのですが、経済学に興味がある私にとっては非常におもしろい。

特に「なぜ彼女からもらった手編みのセーターがうれしいのか」って話になるほど〜と思えたんで、機会費用の説明とともに紹介していきます。

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1.選ばなかった選択の価値を示す「機会費用」とは

機会費用」という経済学用語があります。なんとなく耳にしたことがあるし、どんなものかはイメージができるけど、はっきりと言語化して定義することは難しいって方は多いんじゃないでしょうか。私もその一人でした。

本書によると機会費用とは、

機会費用とは、複数の選択肢があるとき、ある選択肢を採用したことによって犠牲にされた選択肢を選んでいたならば得られたであろう価値のことである

という定義が紹介されています。なんとなくわかるけと、イマイチぴんとこない表現です。

たとえば、いま手元に1000円あるとしましょう。この1000円を使って、映画を1本観たとします。すると同じ1000円を使って得らたはずの別の経験(1000円のランチや1000円の本・雑誌・CD・アプリの購入)は得られなくなります。

この「1000円を使って得らたはずの別の経験」が機会費用、ってわけですね。

私の例でもあんまり理解しやすいとはいえないと思いますんで、本書導入部分で紹介されている彼氏と彼女の話を引用してみましょう。

2.6000円の機会費用を失い、3万円の機会費用をもらった彼女

本書では、機会費用への理解を助ける例として、大学生カップルの話が出てきます。あらすじはこんな感じ。

  • 彼氏からデートの誘いを受け、日給5000円のバイトを休んで待ち合わせ場所に向かった
  • 自宅から待ち合わせ場所へは、往復1000円の電車賃がかかる
  • 結局、彼氏にデートをすっぽかされてしまった

この場合、彼女はバイトをして得られたはずの5000円と、待ち合わせ場所に行かなければ別のことに使えたはずの1000円、合計6000円の機会費用を失ったことになります。

6000円よりも彼氏とのデートの方が価値があると判断して待ち合わせ場所に向かったのに、待ち合わせ時間になっても彼氏は現れなかった。つまり、6000円でランチしたり買い物したりする価値を捨てて彼氏とのデートを選んだのに、それをすっぽかされてしまったわけです。

ここでちょっと注目したいのは、本来バイトを休まなければもらえたはずの5000円も、機会費用に含まれるって点であります。実際に財布から出て行った1000円という電車賃については、機会費用であるってことに異論はないでしょう。

しかし、実際には財布から出て行ってなくとも、本来得られたはずの5000円のバイト代を断ってデートに向かったことになるので、この5000円も機会費用となるんですな。

彼氏が3万円の機会費用を払ってプレゼントしてくれたイヤリング

そして後日、彼氏からデートをすっぽかしたことのお詫びとして、3万円のイヤリングをプレゼントしてもらいました。当然彼女は大喜び。では、なぜこのプレゼントでうれしい気持ちになったのでしょうか?

それは、彼氏が3万円という機会費用を払い、自分にイヤリングを買ってくれたことがうれしかったのです。3万円あれば、自分が飲み会に行ったりゲームを買ったり、服を買ったりすることができたでしょう。

別のことに使えば彼氏自身が3万円分の価値を得ることができた。なのにそれを蹴って彼女にプレゼントを買ってくれたことがうれしかったのであります。

以上をまとめると、彼女は3万円という金額がうれしかったのではなく、彼氏が自分のために機会費用を払ってくれたことがうれしいのである。

彼氏からすれば、3万円で自分の欲求を満たすことよりも、彼女の幸せの方が価値があることだと判断し、プレゼントを贈ったことになります。

3.セーターを編む「時間」という機会費用をもらった彼氏

ただし、「機会費用」という響きからはお金のことだけを連想してしまいがちですが、もちろんお金以外も機会費用となります。たとえば「時間」。

本書では、3万円のプレゼントをもらった彼女が、彼氏へのお礼として手編みのセーターをプレゼントしたという話が紹介されています。ただし編み物に関しては素人で、完成したセーターはどう見てもお店に置けそうにないひどいものだったそうな。

しかし、それを受け取った彼氏は大いによろこびます。お店に並べられないような0円の価値しかないセーターなのに、なぜ彼氏はよろこぶのでしょうか?

それは、彼女がセーターを編むために費やした「時間」の機会費用がうれしかったからです。もしセーターを編むのに10時間かかったとすれば、ほかのことに費やせたはずの10時間を、自分へのプレゼントのために使ってくれた、ということになります。

彼氏はそのセーターの市場価格に表される金額(金銭的費用)がうれしいのではなく、彼女の機会費用がうれしいのである。

10時間あれば、テレビを観たりSNSをしたり、睡眠時間にあてることもできたはず。でも彼女は、手編みのセーターをつくって彼氏にプレゼントすることの方が、睡眠時間よりも価値あることだと考えた。その気持ちが彼氏にとってはうれしい出来事だったのであります。

まとめ

本書は経済学の専門用語を解説した本ではありますが、紹介したように人の感情を扱った話も数多く登場し、楽しみながら「機会費用」についての理解を深めることができます。

ビジネスの世界での「機会損失」との違いとか、専業主婦や失業者、都会の遊休地についても機会費用の考え方をもとに解説されていて、非常に興味深いです。

本文はだ・である調なので、ちょっと硬い文章に見えるかもしれませんが、難しい言い回しは少ないのでスラスラ読めるはず。経済に興味がある方にはおすすめです!