BBD

「昨日の自分に教えたいこと」をテーマに書き散らしてます

「カメラで思い出を保存」だと逆に印象に残らない?記憶に残すための撮り方とは

f:id:rough-maker-an9:20180315221859j:plain 有名な観光地へ旅行に行くと、やたらとスマホを構えて写真を撮りたがる人を見かけますが、「それってホントに楽しいの?」と思うのは私だけではないでしょう。「写真ばっかりに気を取られて、目の前の光景を楽しめてるの?」と。

そんな感覚の正しさを裏付けるような実験データがありますんで、今回はカメラと記憶の残りやすさをテーマにした記事をお届けします。

SPONSER LINK

1.観光地で写真を撮りまくる人たち

私は旅行で函館や沖縄、京都などを訪れたことがあります。いずれも1日〜数日の短期間でしたが、有名な観光地を巡り、普段見ないような景色を楽しんで帰ってきました。

私のポリシーの1つに「たくさん写真を撮らない」というものがあります。というのは、写真ばっかり撮っていると、今の体験に集中できなくなるからです。スマホの画面に映る光景ばかり見て、自分の目で見る光景に集中できなくなっちゃうじゃん、と。

なので、写真を撮って思い出づくりとするのは、じゅうぶんに目の前の光景を楽しんだ後。いわば2周目になってからやっと、スマホを構えて風景を写真に収めるようにしています。

ですが、海外からの観光客を中心に、やたらと写真を撮りたがる人たちっていますよね。たまたま観光地を散歩していた地域住民のペットにスマホを向けたりとか。「それ今じゃなくてよくない?」と思えたりします。

2.写真と記憶を調べた実験

この「あれ?」って感覚が正しいと裏付ける実験が、『退屈すれば脳はひらめく』という本のなかで紹介されています。本書は、「スマホを手放してもっと退屈な時間を増やそう!退屈な時間は、創造性を高めてくれるよ!」というコンセプトのタイトルであります。

んで、どういう実験かというと、

フェアフィールド大学心理学教授のリンダ・ヘンケルは、写真を撮ることが経験や記憶にどんな影響を与えるか調べる実験のため、学生に大学付属のベラーミン美術館のガイドツアーに参加してもらいました。

というもの。

鑑賞する作品について半分は写真を撮り、残りは写真を撮らずに鑑賞するよう指示し、翌日になってあらためて全員を研究室に集め、鑑賞したすべての作品について記憶テストをしました。

つまり、美術館をカメラ片手に巡るか、それともカメラなしで巡るかによって、作品についての記憶の残りやすさを調べたわけですね。

3.記憶テストの結果は…?

「たぶん、カメラなしの方がよく覚えてるんだろうな」と思った方、大正解です。

写真を撮った作品については、作品そのものをあまり覚えていませんでした。覚えていたとしても、写真を撮らなかった場合と比べると、細かいところをよく思い出せませんでした。

2つのグループを比較したところ、カメラ片手に美術館を巡った方が、作品について覚えていなかったとのこと。

おそらく、これは多くの人の感覚とも一致する話ではないでしょうか。カメラで目の前の光景を切り取れば、たしかに写真としてのデータは残ります。

でも、たとえばカメラを忘れて観光に来てしまった場合に「写真は撮れないから、心のシャッターでじっくり楽しむぞ!」という気持ちで観光した方が、美しい思い出は長く心に残るような気がしますよね。

4.写真によって記憶を「アウトソーシング」してしまう

写真に撮ると思い出が減ってしまう」というこの現象については、メカニズムがしっかり解明されています。

写真を撮ると、自分のかわりにカメラが記憶することを期待してしまう。つまり、こういうことです。『よし、これ以上はもう覚えなくていいぞ。カメラが記憶してくれるから』。カメラに仕事をアウトソースするため、複雑で感情のこもった情報処理がまったく行われないんです。

人間はカメラという機械に頼ってしまうと、どうやら記憶する努力を放棄してしまう生き物のようです。実際にはカメラは目の前の光景をデータとして切り取ってくれるだけであって、その場の雰囲気、肌で感じる感動なんかは記録してはくれません。

感情をともなう記憶は、人間の目と耳と鼻、脳を使わなければ残らないわけです。なんだかもったいない気がしますね。

つまり、カメラがある瞬間を記憶すると、脳はそれをしなくなる。ヘンケルはこの現象を「写真撮影による記憶の損傷効果」と呼んでいます。

ちなみに、同実験をおこなった心理学者は、この現象にこんな名前もつけています。

私はこの話を聞いて、高校や大学でよく注意された「携帯で板書を撮るな!」という経験を思い出しました。ちゃんとノートを取れ、鉛筆でガリガリと書け、ということですね。

当時私は、「なんて生産的でないことに時間を費やしているんだろう。写真に取れば書く手間も労力もいらないじゃん」なんて浅はかな考えをしていました。

でも、『写真撮影による記憶の損傷効果』によれば、携帯で写真を撮って「ノートを取る作業」をアウトソーシングすることによって、勉強したことを記憶する障害となっていたことがわかります。

こういう実験を示して、「板書の撮影は記憶に残りづらくなるってデータがあるからダメだよ」と諭してくれる先生や教授がいたなら、もう少しテストでいい点数が取れたのかもしれません。笑

5.記憶を損なわない写真の撮り方

この実験の紹介の最後に、記憶を損傷させない写真の撮り方というのも取り上げられています。実体験として思い出に残り、さらに写真という形でも見返せるのであれば、それに越したことはありませんよね。

それはどんな方法かというと、

作品の特定の部分をズームして撮ると、その後の認識と細かい記憶が損なわれることはなかった。それどころか、ズーム撮影していない箇所の特徴についても同じくらいしっかりと記憶されていた。

つまり、特定の部分に関心を向け、細部に集中して意識を寄せれば、『写真撮影による記憶の損傷効果』を防げるってわけであります。

花を撮るなら、花畑ではなく花弁を。 木を撮るなら、森林ではなく葉っぱを。 動物を撮るなら、10匹ではなく1匹を。

そういうことでありましょう。遠く引いて全体を意識して撮影するのではなく、接写でごく細かい部分に目を向けた写真を取れば、記憶や思い出を損なうことがないということですね。

先ほどの板書の例でいうならば、1回で黒板全体を撮影するのではなく、見出しや段落ごとに写真を撮り、数枚に分けて撮影すると記憶に残りやすくなるのかもしれません。その分、シャッター音も増えて怒られやすくなりそうですが…。

まとめ

  • 写真を撮りながら美術館を巡ると、作品についての記憶が損なわれてしまう
  • 人には、カメラに頼り自分で記憶する努力を放棄してしまうクセがある
  • 記憶の損傷を防ぐためには、細部に集中し、1つの対象に関心を向けて撮影すべし

というわけで、目の前の光景を楽しむことなく写真ばっかり撮っていると、旅行も観光も思い出に残らなくなってしまうよ、という話でした。やっぱりカメラ構えてばかりというのは、カメラマンを本職とする人以外は避けた方がよさげですね。

写真を撮りためてブログやインスタにアップする…というのが観光の目的ならそれでもいいでしょう。そうではなく、「観光を楽しむため」に旅行に行くのであれば、スマホの画面よりも目の前の光景にこそ意識を向けるべきです。

データや形としては残らないかもしれませんが、心には強い感動として残ってくれるはずですよ。

以上、『「カメラで思い出を保存」だと逆に印象に残らない?記憶に残すための撮り方とは』という記事でした。

関連記事

nogunori.hatenablog.com