仕事や勉強など1つのことに集中していると、「もうムリ」と精神的な疲労を感じることがあります。そんなときに外へ出て、公園でのんびり過ごしてリフレッシュすると、また作業に取り組むやる気が出てくるものです。
これは「注意力回復理論」で説明できる現象で、5分で集中力をアップさせることが可能なテクニックとなります。
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1.注意力回復理論(ART)とは
注意力回復理論というのは、ミシガン大学の心理学者スティーブン・カプランとレイチェル・カプランより提唱された考え方です。この理論により実証されていることの1つに、「自然の中で過ごすと、集中力が向上する」というものがあります。
カプランらがおこなった研究によると、被験者のグループを2つに分け、「数字を逆唱する」というゲームに取り組んでもらったそうな。イメージとしては、100から3を引いた数を延々答えてもらうというものです。
97、94、91、と答えていってもらうもので、地味に集中力が必要とされる作業です。んで、2つに分けたグループの片方には「植物園」を歩いてもらい、もう一方には「繁華街」を歩いてもらいました。
結果、繁華街を歩いたグループに比べ、植物園を歩いたグループの方が20%もテストの成績が良かったのです。これは1つのことに集中する「方向性注意」と、注意力を分散させる「選択性注意」をうまく切り替えたことにより、好成績につながったものとされています。
2.「方向性注意」と「選択性注意」
「方向性注意」ってのは、勉強や仕事など、1つの方向にだけ注意を向けることをいいます。対して「選択性注意」ってのは、1つだけでなく無数の方向へ注意を向けることをさしています。「意図しない注意」または「自動的注意」と訳されることもあります。
方向性注意の一番の例は、スマホでしょう。スマホをいじっているとき、私たちの注意力のすべてがスマホに向けられています。ついついスマホを注視してしまって、駅や街中で事故につながってしまうことから、歩きスマホも問題になっていますよね。
選択性注意については、うっそうと茂る森の中をイメージしてもらうとわかりやすいかも。雄大な緑の中に身を置いていると、動物の鳴き声だったり木漏れ日だったり小川の音だったり頬に伝わるしっとりした風だったり、五感を通じてさまざまな情報が入ってきます。
そんな自然の中では、1つの鳴き声や小川の音に集中することはできないでしょう。スマホをいじっているときに比べて、いろんな対象に注意を向けていることがわかると思います。
3.自然の中を5分歩くだけでも集中力が回復
んで、この方向性注意と選択性注意のうち、方向性注意が私たちの仕事や勉強の場面で役立つ重要なスキルです。しかし方向性注意に関しては、約90分までしか持続しないとされています。
1時間半ほどで集中力が切れ、勉強や仕事に疲れてしまう…と考えると、直感的に納得しやすいんじゃないでしょうか。
いったん方向性注意による集中力が消耗してしまうと、目の前の課題に没頭できなくなります。それを防いでくれるのが、選択性注意なのであります。
数字を逆唱するって実験でもわかった通り、選択性注意(植物園を歩く)により、方向性注意(数字の逆唱)のパフォーマンスが向上し、20%の成績アップにつながりました。つまり、選択性注意によって方向性注意が回復するということであります。
選択性注意による集中力アップの恩恵は、緑の中を5分ほど歩くだけでも得られるそう。なので、学校や職場の休み時間に中庭を散歩したり、公園まで足を伸ばしてベンチで休んだりすることにより、勉強や仕事の効率がアップすることが期待できるわけです。
「最近集中できないな」と感じている方は、今回紹介した方向性注意と選択性注意の関係を意識しながら、自然に触れる機会を設けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
というわけで、注意力をテーマにした「注意力回復理論」と、この理論を応用した集中力アップに役立つ行動を紹介してきました。
今回のネタ本は、メンタリストDaiGo師匠による『ストレスを操るメンタル強化術』です。本書には今回した集中力アップ術のほかにも、「14秒」でストレスを低減するラトガース大学の研究なども取り上げられています。
ストレスを減らし集中力をアップさせたい方は、ぜひ手に取ってみてください。