普通に人と関わって暮らしていれば、グチをこぼしたくなることも、グチを聞かなければいけないこともあることでしょう。しかしグチはなんの役にも立たない不毛な行為ってことを忘れてはいけません。
どころか、『友だちの数で寿命はきまる』という本によれば、グチをこぼすだけで不幸になり、不健康になり、寿命が縮むことが指摘されています。今回は恐ろしい「グチ」の話です。
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1.「テロメア」を縮ませるストレス反応
人間の体は何兆個もの細胞によって成り立っています。一人の成人を構成する細胞数は、60兆とも37兆ともいわれています。いずれにしろ想像できないような膨大な数ですね。
この一つひとつの細胞の寿命を司っているのが、染色体の末端にある「テロメア」という存在です。テロメアは細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていき、最終的には細胞分裂が止まってしまう性質を持っています。
細胞分裂が止まるってことは、人体の新陳代謝がストップするということ。要は老化するってことですね。
「命の回数券」とも呼ばれるテロメアの恐ろしいところは、ストレス反応によってテロメアが縮むことがわかっているという点です。ストレスを受けると、テロメアが短くなって細胞分裂の回数が減り、細胞の寿命が短縮されてしまい、老化が進みやすくなるということです。
2.グチりたくなる場面をイメージするだけで寿命が縮む!
ところでグチをこぼすということは、脳内でグチりたくなる場面が再生されているということでもあります。「今日職場でこういうことがあって…」と強いストレスを受けた場面を回想し、ネガティブな記憶をもとにイライラを吐き出しているってことですね。
「グチをこぼしてすっきりした!」なんて体験があると、グチをこぼすことはストレス解消になる!と一見思ってしまいがちですが、実はそうではありません。ネガティブな記憶を思い出すことで、強いストレス反応を何度も繰り返し疑似体験することになります。
その結果、グチをこぼさない時と比べて、私たち自身の細胞(テロメア)に何倍ものダメージを与えてしまっているんです。
このことを裏付ける、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究があります。50名の女性を対象としたエリザベス・ブラックバーン教授によるこの研究では、次のようなことが判明したといいます。
「人前で話をする」といったストレスフルな状況に自らが置かれたと想像するだけで、実際にストレスフルな状況に置かれていなくても、テロメアが短くなって細胞の寿命が縮むことがわかったのです。
ネガティブな記憶を思い出したり、ストレスを受ける場面をイメージするだけで、体の中ではテロメアが短くなって細胞の寿命が縮んでいるということです。
3.グチをこぼす前に一呼吸。「あの人も大変なんだ」と思いやるべし
私はこの研究を知るより以前から、「できるだけグチは口にしないぞ」というスタンスでいました。嫌いな人やストレスフルな状況をわざわざ思い出すなんて、自分の時間やエネルギーのムダだと思っていたからです。
どうせならその時間やエネルギーを、大切な人と楽しく話すことやうれしかった思い出を想起することに使いたいと思っていたわけです。
とはいえ、常日頃からグチをこぼしまくっている人が、いきなり考え方を変えるのは難しいことでしょう。可能ならグチりたくなる状況を回避すること(転職する、引っ越しをする、とか)も考えたいですが、こちらも簡単ではないはず。
そこで『友だちの数で寿命はきまる』で提唱されているのが、「あの人も大変なんだ」と思いやりの気持ちを持つことです。
他者に対して思いやりを持つことは「セロトニン」という脳内物質を生み出すことにつながります。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれているとおり、幸せな気分をもたらしてくれる物質です。
グチをこぼすことでネガティブな気分でいっぱいになり、寿命を縮めてしまう。それに対して思いやりの気持ちを持てば、幸せホルモンに満たされて明かるい気分になれる…。私たちがどっちを選択すべきかは明らかですよね。
「もしかしたら超ツンデレな人なのかも」
「怖い夢でも見て寝不足だったんでは?」
「おなか下しててトイレに行きたかったのかもしれないし」
のように考えると同時に、「だったら仕方ないよね。もっとやさしく接しよう」と心がけてみるのはいかがでしょうか。イライラする相手を思いやるのは、最初は難しいかもしれませんが、慣れれば自然とできるはずですよ。
まとめ
以上、グチをこぼすたびに不幸になり、不健康になり、寿命が縮むことについてお伝えしてきました。百害あって一利なしってのが、グチというものです。
グチを黙って聞いてくれるような思いやりある相手には、こちらも思いやりの気持ちで応えたいもの。そのためにはグチりたくなる状況でも思いやりの気持ちを忘れず、穏やかな気分でいることを目指したいですね。